高低差4,000m「天然の生け簀」富山湾
標高3,000m級の北アルプス立山連峰から水深1,000mの海底に到達する富山湾は、世界的にも類を見ない急峻な地形構造です。この「高低差4,000m」の一気に湾底まで落ち込む斜面「海底谷」を「ふけ」と呼んでいます。
立山連峰とそれに連なる山並みからの雪解け水や雨水は、森林を通って河川に流れ込み、やがて海へとたどり着き、この海底谷「ふけ」へ流れ込みます。森林で有機質をたくさん蓄えた河川の水は、海底谷「ふけ」で豊富なプランクトンを培養します。富山湾の中でも氷見沖は最も大陸棚が発達しているため、魚のエサとなるプランクトンが多く、魚たちにとっては産卵をするのに快適な場所なのです。
漁場が漁港に近いということは魚の鮮度、美味しさに影響しています。氷見は富山県の中でも特に地形が急峻なために、漁場から港までの距離が近く、まさに生け簀から魚をすくうがごとく鮮度を保った状態で配送が可能となります。
400年の歴史「環境にやさしい氷見定置網漁」
氷見の「越中式定置網漁(えっちゅうしきていちあみりょう)」は江戸時代から富山湾で続いている漁法で
「魚を傷つけない」「捕り過ぎない」などの工夫がある、持続的な資源利用に向けた環境にやさしい資源管理型漁法と云われています。
江戸時代から続く富山湾の「越中式定置網漁」は沿岸に網をしかけ、じっと魚がくるのを待って、網に入ってきた魚をとる、400年もの歴史をもつ伝統的な漁法です。
氷見市は越中式大謀網の発祥の地であり、富山湾沿岸で台網と呼ばれた漁具の時代から400 年を越える歴史のなかで技術展開が続けられ、大正年間に上野式大謀網、昭和初年には落し網の方式が考案されて、日本各地へ普及していき、現在の漁具の主流となる二重落し網の出現へと続いてきたと推測されています。
定置網漁は、魚を傷つけないようにしたり、とり過ぎないようにしたり、網の目によってそれより小さい魚をとらないようにするなどの工夫があり、他の漁法と比べて海にあたえる影響が少ないため、自然への回帰や資源の大切さが見直されている近年では、魚を根こそぎ獲ることのない環境に優しい環境保全・資源管理型漁法として、未来へ繋げる新しいあり方として注目されています。
また、陸から近い沿岸の漁業のため、漁場までの時間は約20から30分間ぐらいなので、船の燃料も少ない省エネ漁法として今後益々重要となってくるでしょう。
このような利点をもった定置網漁を世界に紹介するために、富山県氷見市では2002年に「世界定置網サミット」が開催しました。
400年の歴史を誇る「環境にやさしい氷見定置網」は、国際貢献として世界に向けて発信し、東南アジアなどの沿岸漁業の国々の水産業の振興を図り、新しい未来を創り出しています。
※引用元